父親が親権を獲得できる条件

母性優先の原則

離婚に際しては、父または母のどちらかを親権者として定めますが(民法819条1項、2項)、未成年の子の親権が争いになる場合、「母性優先」という言葉がよく聞かれます。

簡単に言えば、子の年齢が小さければ小さいほど、母親が親権者に選ばれやすい、ということです。

なぜ「母性優先」か。

それは、(特に乳幼児の)子どもの成長を考えるときに、母親が必要不可欠な役割を果たしていることに由来するといって間違いはないでしょう。子どもは母親が出産し、母乳を飲んで育ち、母親が常に子どもに付き添って成長していく、そのような家庭観を持つ人は多いのではないでしょうか。そして、そのような家庭観を前提として、長年わが国の社会構造が形成されてきたことも事実です。

しかし、現在、社会状況は刻々と変化しています。

女性の社会進出が叫ばれ、「主夫」や「イクメン」という言葉ができたり、男性も育児休暇をとれる時代にもなってきました。手のかかる育児において、父親が「母性」を担うことも多くなってきているように思います。

ただし、現実は、まだまだ父親が一家の大黒柱で、母親は家庭を守るという形態の家庭が多いと思います。そのような中で、離婚に際して、父親が子の親権を獲得することは決して容易ではない現状があります。

父親が親権を獲得できる条件

さて、そろそろ本題に移りますが、上記のような家庭で育ってきた子の親権を父親が獲得できるケースには、どのような共通点があるのでしょうか。

先程、母性優先の原則について述べましたが、親権判断においては、子の福祉を考える上で重要な要素がもう2つあります。それは、「監護の継続性」と「未成年者の意思」です。

監護の継続性とは、親権を決める時点において、子どもの監護状況が適切である以上は、その監護状況を継続すべきであるという意味です。

また、未成年者の意思は、概ね15歳以上の場合に、親権判断において非常に重視されます。①の母性優先とは逆に、子ども自身が自分で適格な判断をすることができる年齢として認められていると言って良いでしょう。

以上を整理すると、父親が子の親権を獲得できるのは、

  • 離婚時において父親が子どもを監護しており、その監護状況が適切と認められる場合
  • 子どもが15歳以上で、父親が親権者となることを子どもが望んでいる場合

上記の2パターンで可能性が高くなると言ってよいと思います。

逆に、子どもの年齢が比較的幼く、かつ離婚時に母親が子どもを監護している場合、父親が親権者として認められる可能性はかなり低くなるでしょう(母親によるDVなどがあるケースは除きます。)。

以上、父親が親権を獲得できる条件について述べましたが、親権判断においては、「子の成長にとって何が一番適切なのか」ということを忘れてはなりません。子どもの幸せを一番に考えることこそが、親の最も重要な責任なのかもしれませんね。