成人年齢引下げと養育費

民法改正による成人年齢の引下げ

平成27年6月の公職選挙法の改正により、18歳以上の日本国民に選挙権が与えられるものとされました(平成28年6月22日以降の選挙に適用。)。これに引き続き、平成30年6月13日には、民法の定める成人年齢を18歳に引き下げる内容の改正法が成立し、平成34年4月1日から施行されます。

これにより、法律行為に伴い親権者の同意や代理が必要な年齢(民法第5条1項、第824条)や、子が親権に服する年齢(同法第818条1項)も18歳までとなり、また成人年齢の変更に合わせて女子の婚姻可能年齢も18歳に揃えられました(同法第731条)。

養育費への影響

さて、このような法改正に伴い、従前「原則20歳まで」とされていた養育費の支払終期は、どのような影響を受けるのでしょうか。

この点、子が親権に服する年齢が18歳とされ、親権者の監護義務も18歳までになること(同法第820条)に照らせば、養育費も18歳まで支払えばいいようにも読めます。

しかし、そもそも民法は、養育費の支払終期について明確な規定を置いていません。民法第766条1項には 「父母が協議上の離婚をするときは、・・・子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。」とありますが、「子」が何歳までを指すのか明確ではありませんね(対比として、同法第737条1項など)。

現在(改正前)、子の扶養義務をいつまで負うべきかについては、子が経済的に「未成熟」な間、と漠然とした基準で解釈されています。そして、いつまでが「未成熟」かというと、一般的には「20歳」、すなわち民法上親権から脱し、全ての法律行為を自分自身でできるようになる「成人」年齢には未成熟でなくなるだろうという想定で、養育費も原則20歳までとされることが多いというわけです。

したがって、法改正前でも、必ずしも養育費が20歳までとされているわけではありません。経済的に未成熟かどうかは子によって異なり、高卒で独り立ちする子の場合は18歳までとされることもありますし、大学へ進学する子には、大学卒業時まで養育費を認めるケースも多いのです。

以上を踏まえると、民法改正で成人年齢が18歳になったからといって、子が18歳で「未成熟」でなくなるわけではありませんから、養育費の支払終期も、これまでの運用と別段変わることはありません。これまでと同様、何歳まで養育費が必要かについては、子の進学や就職、家庭の事情などに照らして個別に考えていかなければならないということですね。

以上に関して、法務省も「成年年齢が引き下げられたからといって,養育費の支払期間が当然に『18歳に達するまで』ということになるわけではありません」と補足しています(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00230.html)。