養育費・婚姻費用の新算定表(令和元年版)

令和元年12月23日、裁判所より、平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)が発表されました。養育費・婚姻費用の改定がなされることは前々から話題になっていましたが、ついに公表されました。ここでは、簡単に、その内容と、従前の算定表との相違についてまとめていきます。

新算定表のポイント

まず、今回の新算定表は、従来の算定表による養育費・婚姻費用の考え方に大きな変更を加えたものではありません。従来の算定表は、当事者の収入から必要な諸経費を差し引いた「基礎収入」を、子の生活費指数に従って分配するという考え方を採用していましたが、今回の新算定表もこれを踏襲しています。

主な変更点はというと、(1)収入から差し引かれる項目(租税公課、職業費、特別経費など)の額が最新の統計資料に準拠した金額となったこと、(2)子の生活費指数が改定されたこと(14歳以下は55→62、15歳以上は90→85)の2点といえます。

新算定表が適用されることで実際にどの程度の養育費・婚姻費用の変化があるかというと、結局はそれぞれのケースにおける当事者の収入や子の年齢・人数などの状況によるとしか言えませんが、個人的な体感としては、概ね1~2割程度の増額、といったところでしょうか。

留意すべき点

なお、今回の新算定表の発表においては、いくつかの点に留意すべきと考えます。

まず、既に養育費・婚姻費用の取り決めをしている場合、「原則として」新算定表によって計算しなおす必要はない、ということです。このことは、裁判所が公開資料において明記しています。しかし、実際のところは、養育費・婚姻費用の取り決めをして暫くの時間が経っていれば、当事者の収入や子の年齢等にも変化が生じているものと思われますので、いずれかの当事者が養育費・婚姻費用の増額(減額はあまりないかもしれませんが)を申し出る場合は、再度新算定表を用いて計算しなおすことも多いのではないかと思います。

また、裁判所は、2020年4月1日に施行される成人年齢の引き下げは、養育費・婚姻費用の算定には影響しないことも明記しています。今後も、養育費の終期は(原則として)満20歳ということになります。