養育費・婚姻費用の「新算定表」について

日弁連の「新算定表」

最近、養育費や婚姻費用の金額の算定について「新算定表」に基づいて算定できないか、といった相談をしばしば頂きます。

ここで、「新算定表」とは、平成28年11月に、日本弁護士連合会が最高裁や法務省に対して行った新たな算定表の提言のことで、日弁連のホームページで公開されています。→https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2016/161115_3.html

主に、特別経費や租税公課の金額を最新の統計などを用いて見直すことで可処分所得の計算を修正したことにより、養育費・婚姻費用の金額が増額されたほか、生活費指数を家族構成などにより細分化し、新たに39種類の表に分類されました。

従来の算定表に対しては、義務者(支払う側)の生活保障に重点を置きすぎているとの批判もあり、新算定表の運用が実現すれば双方の生活に大きな変化を与えることは間違いありません。

新算定表は実務上適用されるのか

それでは、新算定表は実務上通用しているのでしょうか。

実際、これまでも、従前の算定表の問題点について問う裁判も度々ありましたが、現在のところ、裁判所は「従前の算定表になお合理性がある」という判断を繰り返しています。

そのような裁判例の積み重ねもあり、現時点では、家庭裁判所の運用において、日弁連の新算定表に基づく算定は行われていません。

最高裁による算定表見直しの兆し

しかし、昨年(平成30年)になって、最高裁がついに算定表の見直しに動く様子を見せています。従前の算定表は、平成15年ころに作成されたもので、算定に用いられる統計もその当時のものが使われているほか、離婚率が増加しシングルマザーが増えている現在の社会情勢を十分に反映したものとは言えないでしょう。

最高裁は、2019年5月頃を目途に、見直しに関する報告書をまとめることとしており、今後新たな算定表が公開されるのか、注視していく必要があります。

財産開示に関する民事執行法の改正

また、これと並行して、財産開示制度に関する民事執行法の改正も準備が進められています。

離婚後の養育費については、その回収率が問題となっており、養育費を支払わない親からどのようにして養育費を回収するかという点は、離婚の時点でも大きな課題となります。

この点については、また回を改めてお話しする予定です。