養育費等をきちんと支払ってもらうために(財産開示制度の改正について)

令和元年5月17日、改正民事執行法が公布されました。

本改正では、財産開示制度のほか、子の引渡しに関する強制執行の見直し等も含まれますが、本稿では、財産開示制度の改正について述べることとします。

従前の財産開示制度とは

財産開示制度(現行民事執行法196条〜)とは、判決等で債務が確定した債務者に対し、その財産の開示を求めるための制度ですが、その方法は、債務者を裁判所に呼び出しその財産に対する質問をしたり、財産資料の提出を求めるというものにとどまり、またこれに応じなかったとしても30万円以下の過料の制裁(同法206条)が科されるだけでした。

これでは、債務者は、財産を開示するどころか、裁判所に出頭すらせず、制度の実効性が疑問視されていました。

改正によって何が変わるのか

1 申立てができる人の範囲が拡大

まず、財産開示の申立ては、これまでは、確定判決等(審判、調停は可)を有する債権者に限られており、支払督促や公正証書、仮執行宣言付き判決では財産開示制度は利用できないものとされていました。

今回の改正により、これらの債務名義を有する者も本制度を利用できることとされました。

離婚の関係では、婚姻費用や養育費は、必ずしも調停や審判によって取り決められるわけではなく、公正証書によって合意する場合も少なくありません。

これまでは、せっかく強制執行認諾文言を付した公正証書を作成しても、財産開示制度を利用するためには改めて調停や審判の申立てが必要でしたが、本改正により、公正証書の場合でも財産開示制度を利用できることとなりました。

2 第三者からの情報取得手続の新設

強制執行の申立てを行う場合、債務者がどこにどのような財産を保有しているかを債権者側で特定しなければなりませんでした。例えば、預金口座の銀行名や支店名、勤務先の会社名などは、債権者側で調査しておく必要があったのです。

しかし、債権者において債務者のこのような情報を把握しているケースは決して多くありません。特に、離婚した後に、元夫や元妻の口座情報や勤務先を常に把握しておくのはほぼ不可能といっても過言ではありません。

本改正により、債権者は、裁判所に対し、債務者の不動産、預貯金、勤務先などの調査を申し立てることが可能となり、これによって債務者の財産の所在を突き止めることが可能となりました。

これまで養育費や慰謝料の不払い等で泣き寝入りをしていたケースでも、回収できる可能性が出てきたわけです。

3 不出頭等に対する罰則の強化

上記のとおり、これまでは、財産開示手続への不出頭等に対する制裁は、30万円以下の過料のみでした。

本改正では、その制裁が強化され、刑事罰(3年以下の懲役または50万円以下の罰金)が科されることとなりました。

本改正の施行は1年以内

今回の改正は、1年以内の政令で定める日に施行されることとなっています。

養育費等の不払いは、様々な社会問題の原因となっています。本改正がきちんと機能し、公正公平な社会の実現に寄与することを期待します。